中高年、特に60代以降のセックスについては、依然として「恥ずかしい」「卒業すべきもの」という偏見やタブー視が根強く残っています。実際には、60代の男女の約20％が月に1回以上セックスをしており、性生活を続けている人が少なくありません。これは決して珍しいことではなく、人生100年時代の今、中高年も性を楽しむ権利と可能性があることを示しています。
過去の親世代から引き継いだ価値観により、「更年期を過ぎたらセックスはしないもの」と考えている人も多いですが、これからの長い人生を健やかかつ充実して過ごすために、性を含む自己の幸福感の維持は非常に重要です。離婚や再婚、パートナーの変化も少なくなく、セックスを再開または新たに楽しむケースも増えています。
中高年の性の二極化とセックス寿命
60代におけるセックスの状況は二極化が進んでいます。一方で、調査によると男女の過半数は1年以上セックスをしていない一方、約20％は月1回以上セックスを楽しんでいる状況です。40代や50代と比較すると減少は見られるものの、20％は中高年になっても積極的に性を愉しんでいることになります。
社会的な抑圧や誤解により、「高齢になってもセックスする自分はおかしいのではないか」と悩む声もありますが、これは間違いです。人生が長くなる今の時代、性は健康で豊かな人生の一部として位置づけられています。自らの価値観を見直し、周囲にも尊重を求めることが大切です。
更年期以降の性交痛と身体の変化
多くの中高年女性が直面する問題の一つが性交痛です。約6割の女性が性交時に痛みを感じており、これは決して珍しい症状ではありません。主な原因は加齢に伴うエストロゲン減少による腟の萎縮や潤いの減少で、これが性交時の不快感や痛みを誘発しています。
男性では性交痛を感じる割合は約2割ですが、女性の割合は大幅に高く、性器の老化が性生活に大きく影響していることは無視できません。中高年になってもセックスを楽しむためには、これらの身体の変化を理解し、適切なケアや対策を講じることが必要です。
性交痛の対策とセルフプレジャーの重要性
性交痛を改善し心地よい性生活を維持するためには、日頃から身体をケアすることが欠かせません。まずはセルフプレジャー、つまり自分自身で快楽を得る習慣を持つことが効果的です。
セルフプレジャーは、女性の場合オーガズムを経験することで快感への感度を維持し、セックス時にもより感じやすくなると言われています。クリトリス吸引型のアイテムやバイブレーターによる挿入練習などを用いて、無理なく身体を柔軟に保つことも可能です。
また、潤滑剤の使用も性交痛軽減に有効です。潤滑剤を使うことに抵抗感を持つ人もいますが、適切に使うことで摩擦による痛みを和らげ、緊張を解き心地よい時間を過ごせます。最近ではエストロゲン含有の潤滑剤もあり、デリケートゾーンの潤いを補いながら痛みの緩和や若返りを促進します。
男性に求められる知識とコミュニケーション
男性の性に関する課題として、テクニックや相手への配慮不足が挙げられます。特に若い世代に多い傾向ですが、自身の性欲を優先し過ぎて相手の快楽を蔑ろにするケースが少なくありません。これは中高年においても重要な課題で、「才能」や「愛情」よりも「知識」と「コミュニケーション能力」が快適なセックスには不可欠です。
相手のどこが気持ちいいのか、何を望んでいるのかをお互いに話し合うことが、満足度や快感を高める鍵となります。女性の多くがオルガズムに達できず、いわゆる「イッたフリ」をしている現状もあり、コミュニケーション不足は深刻な問題です。
中高年も性を楽しむための心構えと選択肢
中高年期は人生の後半戦とも言えますが、健康的でポジティブな性生活を送ることは心身の活力を維持する上でも重要です。性は人それぞれのものであり、無理にしなければならないものでもありません。しないことも、また再開することも自由な選択です。
身体の変化を前向きに受け入れ、必要な知識を得てセルフケアを続けることで、快適な性生活を取り戻せる可能性は十分あります。社会の価値観にとらわれず、自分らしい性の楽しみ方を追求しましょう。
まとめ：60代からの性の健康を考える
60代でも月に1回以上性生活を楽しむ人は2割ほどおり、決して少数派ではありません。加齢による身体変化や性交痛といった課題は存在しますが、適切なケアやセルフプレジャー、パートナーとのコミュニケーションを大切にすることで、性を豊かに楽しむことが可能です。
重要なのは「若い時と同じようにはいかない」という現実を理解した上で、その時々の身体の状態に合わせて楽しみ方を変える柔軟さと、自分自身や相手を尊重する姿勢です。人生100年時代において、中高年の性の健康と満足度を高めることは、充実した人生の基盤となります。